よく「水草水槽にはソイルがよい」という意見を耳にします。定期的な交換が必要なことから、ソイルを好まない向きもあるようですが、そういった方々の間でも、こと「水草の成長」という点に限って言えば、ソイルの効果を認める方は多いようです。

ソイルの長所としては、水草の根張りが良い、養分の豊富に含まれた「肥沃な土」である(これは場合によっては短所にもなりますが)などの点が挙げられると思いますが、最大の特徴はやはり、ソイル自体が水槽水のPH、硬度を安定的に低下させる、と言われている点にあると思います。

一般に水草の育成には弱酸性の水が向いている(ものによりますが)と言われますが、特に南米原産の水草はこの傾向が強く、低PH、低硬度でなくては育たないどころか、あっという間に枯れてしまうものも中にはあります。従来そういった水草を育てるためには、非常に手間のかかる様々な工夫が必要だったわけですが、ソイルはそうした手間を大幅に省いてくれる底砂として登場したため、大いにもてはやされたわけです。

ところで、私が初めて水槽を設置したとき、まず底砂に選んだのは、なんと家の駐車場の砂利でした。もうこの時点で完全に間違っている気もしますが、当時は底床なんて何か入ってればいいんだろうぐらいの意識で、また、魚の飼育をメインで考えていたため、底床についてはほとんど無頓着だったのです。そんな中でもちょこちょこっと水草を植えたりはして、それなりに楽しんでいたのですが、きれいな水槽の写真なんかをあちこちで見ているうちに、しだいに「こんな緑に溢れた水槽を自分も作ってみたい」という気持ちが湧き始めました。そうなると、あとはおきまりのコースで、なんやらかんやらと育てているうちに、気付いたら自分は特にトニナを育ててみたい熱に侵されていました。

で、必殺駐車場の砂利でトニナを育て始めたのですが、当然のことながら全く育ちません。入れても入れてもトニナは細く黄色くなって最後は溶けて消えてしまいます。そのうち、さすがの駐車場男も「これは何かが根本的に間違っているのではないか」と気付きました。今考えれば砂利でも育てられないことはなかったのだと思いますが、当時は底床についてだけでなく何から何まで知識が無く、この環境で育てるのは自分には到底無理な相談でした。どこかで南米の水草はPH6前後あたりが良いという話を仕入れてきて、早速水槽の水を計ってみると、なんとPH8.3です。そりゃ育ちません。どうしたらPHが下がるのだろうと考えて、ようやく色々と調べ始めたのですが、このとき初めて知ったのが、「南米水草に最適!」というソイルの存在でした。すぐに水槽はいったんリセット、ソイルを買ってきてセットし準備万端です。これでPHもぐんぐん下がって、きれいな水草が育つようになるぞ、と思ったものでした。。

そう、その時の私は、これが水槽ペーハーとの長く不毛な戦いの幕開けとなろうとは知る由もないのでした・・・      つづく